これまでの記事で、LED測定の準備が整ってきましたので、実際に測定器を製作して
LEDを評価してみます。
LEDの測定項目により、構成が異なります。
ここでは、LEDの全光束と色度を測定することを目的とします。
そのため、記事「LEDの色」で示したマルチチャンネル分光器と積分球を使用する構成
で作成します。
全光束の測定だけであれば、照度計と積分球を使用する方法の方が安価に測定できま
すが、他の項目の測定も行いたいのでマルチチャンネル分光器と積分球を使用します。
なお、照度計を用いる場合は、校正に全光束標準電球が必要です。
1.全光束の測定
次のような手順で測定を行います。

(1)装置の構成
「LEDの色」の記事で示した以下の構成にします。

(2)装置の校正
以下の2種類の構成を行う必要がありますが、「LEDの色」を参照してください
① 波長校正
② 感度校正
(3)試料LEDの分光分布の測定
校正が終了した段階で、分光分布を測定します。
分光放射束標準ランプで校正を行っていますと、LEDを測定した時の
以下の表示波形の縦軸の単位は[W/nm]で横軸は[nm]です。測定結果をPt(λ)
とします。以下のグラフの縦軸は相対発光強度になっていますが、実際の測定
結果の縦軸の単位は[W/nm]です。

図-5.1 LEDの相対分光分布
被測定ランプの全光束は以下の式により求められます。
・・・(5.1)
ここで
Φt:被測定LEDの全光束の真値
V(λ):被視感度(分光視感効率)
Pt(λ):被測定LEDの分光分布の真値(単位:[W/nm]対[nm])
λ1:380nm
λ2:780nm
Pt(λ)は以下の式により求めます。
・・・(5.2)
ここで
Rt(λ):被測定LEDの分光器の読み値
Rs(λ):全放射束標準ランプの分光器の読み値
Ps(λ):全放射束標準ランプの分光分布(値付けされている値、単位:[W/nm]対[nm])
α(λ):積分球内における標準ランプに対する被測定LEDの波長毎の自己吸収補正係数
またαは分光器を用いる方式では以下のようになります。
・・・(5.3)
ここで
標準ランプや被測定LEDとは別に自己吸収測定用ランプ(補助ランプ)を積分球内に
設置し、このランプを点灯して以下の4種類の値を求めます。
Sas1(λ):標準ランプを設置し、消灯したときの分光器の読み値
Sas2(λ):標準ランプを設置しないで、消灯したときの分光器の読み値
Sat1(λ):被測定LEDを設置し、消灯したときの分光器の読み値
Sat2(λ):被測定LEDを設置しないで、消灯したときの分光器の読み値
[自己吸収補正について]
測定に当たって、標準ランプや被測定LED自身そしてこれらを固定する冶具などが光を
吸収することを考慮し補正を行わなければなりません。標準ランプ測定時と被測定LED測定時と
で積分球内で光の吸収のされ方が異なると誤差を生じるからです。
また、自己吸収補正ランプは積分球内に常時設置しておきます。標準ランプと保持具をはずした
積分球内の状態と、被測定LEDと保持具をはずした積分球内の状態は等しくなければなりません。
[標準ランプのデータシート]
標準ランプを購入したときに添付されているデータは以下のようなものです。
(標準ランプはハロゲンランプです。)
SPECTRAL DATA CHART SPECTRAL FLUX GRAPH


CHROMATICITY DIAGRAM
SPECTRAL RESULTS CIE 1931, 2 DEGREE(2°視野)

図-5.2 標準ランプデータシート
SPECTRAL DATA CHARTから、SPECTRAL RESULTS
のRadiant Flux(放射束)、Luminous Flux(光束)、 xy色度、 uv色度、
CCT(相関色温度)などが計算できます。uv色度と相関色温度は別の記事
で報告します。
計算式は以下の通りです。
全放射束
・・・(5.4)
= 3.032[W]
全光束
・・・(5.5)
= 341.1[lm]
三刺激値 XYZ
・・・(5.6)
= 683 x 0.5501 =375.7
・・・(5.7)
= 683 x 0.4992 = 341.0
・・・(5.8)
= 683 x 0.1709 = 116.7
ここで
・・・(5.9)
は「XYZ表色系」の記事で説明したXYZ表色系の等色関数です。以下のグラフです。
はV(λ)に一致していますので、式(5.5)の全光束と式(5.7)の三刺激値Yは等し
い値になっています。

図-3.7 XYZ表色系の等色関数のグラフ
色度 xyz
・・・(5.10)
= 0.4508
・・・(5.11)
= 0.4091
・・・(5.12)
= 0.1401
以上で標準ランプの値付けされたSPECTRAL DATA CHART(分光データ)から
全放射束[W]、全光束[lm]、三刺激値XYZ、色度xyが計算できました。図-5.2のデータと
一致します。
ここでは標準ランプの分光データをPt(λ)として各種データを算出しましたが、
LEDの特性の計算もPt(λ)に分光器で測定したLEDの分光分布を当てはめるだけです。
ではLEDの分光分布を当てはめてみます。
ここでは実際に分光器で測定した分光分布ではなく、LEDのカタログ値の全光束と
相対分光分布から放射束分布を逆算したのち、この放射束分布から、全放射束[W]、
全光束[lm]、三刺激値XYZ、色度xyを求めてみます。
試料LEDは相対分光分布の図-5.1があるだけです。
このLEDは[NS2W157ART-H3]でデータシートを見ますと全光束の値が52.5[lm]となっています。
図-5.1の波形はMAX=1で正規化されていますので、この波形から10[nm]置きにデータを読み取り、
ある値Xを各波長に掛け算すれば放射束[W]が求まるという仮定で、以下の計算を行います。
全光束を求める式(5.5)を変形してXを挿入します。
・・・(5.13)
P(λ)は図-5.1から読み取った相対分光分布で以下の表(図-5.3)になります。
右のグラフはP(λ)をもとにプロットしたものです。図-5.1とほぼ同じです。

図-5.3 LEDデータシートから読み取った相対分光分布
読み取ったP(λ)を式(5.13)に当てはめ、Φt = 52,5[lm]、Δλ = 10[nm]を代入して
Xを求めると
X = 0.00142
となります。これを相対分光分布の各波長のデータにかけると分光放射束分布になります。
その結果を図-5.4に示します。

図-5.4 LED[NS2W157ART-H3]の分光放射束分布
(相対分光分布と全光束の52.5[lm]から逆算して10[nm]毎に放射束分布Pt(λ)を求めた)
図-5.4のデータをもとに計算した結果を以下に示します。
全放射束
・・・(5.14)
= 0.1668[W]
全光束
・・・(5.15)
= 52.5[lm]
三刺激値 XYZ
・・・(5.16)
= 683 x 0.07424 = 50.7
・・・(5.17)
= 683 x 0.07687 = 52.5
・・・(5.18)
= 683 x 0.06707 = 45.8
Y値は52.5で全光束に一致します。
色度
・・・(5.19)
= 0.3403
・・・(5.20)
= 0.3523
・・・(5.21)
= 0.3074
データシートでは
全光束 = 52.5[lm]
x = 0.344
y = 0.355
となっていますので、グラフから読み取って分光放射束分布を求めて計算した割には、
一致していると思います。

図-5.5 LEDの色度座標(黒丸の位置)

